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上級編

大紀商事ってどんなフィルターを作っているの?

コーヒーバッグやティーバッグ、だしパックなど、飲料抽出用フィルターです。

素材は合成繊維を使用しています。
中でも、お茶やだしなどの抽出には、水に沈みやすく(比重が1を超え、水より重い)、ごみとして燃やすときに窒素酸化物が発生しない、ポリエステルを主に使用しています。また、ポリエステルの中でも、石油ではなくトウモロコシなどの植物から作られ、条件を整えることでコンポスト化(堆肥化)できるポリ乳酸を商品ラインナップに加え、環境問題への対応も考えています。
一方、コーヒーの抽出には水より比重の軽いポリプロピレン(PP)繊維を使用しています。こちらについては、場所を変えて説明をしましょう。

先に素材について、お話をしましたが、続いてフィルターの構造について説明します。
大紀商事のフィルターは大きく2つに分類されます。1つ目は不織布、2つ目は織物です。順番は前後しますが、分かりやすいので、後者の織物から説明しましょう。
織物製のフィルター、飲料フィルター業界では『紗』と称されます。細かいことを言いますと、飲料フィルター用の織物は最も単純な構造である平織りー経糸・緯糸が交互に上下に重なっている構造-で、捩り織―経糸どうしを絡めた間に緯糸を通した織り方-からなる紗とは異なります。しかし、飲料フィルター業界では伝統的に平織りの織物を紗と表現しているので、それに習いましょう。きっと、初めてティーバッグに織物を採用した人が、平織りという正確でも平凡な名称より、紗という、透明感があって美しい響きを持つ名前が高級ティーバッグに相応しいと思ったのでしょうね。
織物からできた飲料フィルターは、繊維どうし(経糸、緯糸)が規則正しく並んでいることから、透明感が高く、抽出性に優れているという特徴があります。その一方で、繊維どうしの隙間が大きいため、ティーバッグとして使用する場合、細かい茶葉が外に漏れだしてしまいます。そのため、中国茶やCTC製法によらない紅茶のような、大きな茶葉に適しており、針状に細く仕上げられた高級緑茶や粒子の細かいCTC製法の紅茶、健康茶には不向きです。
続いて、2つ目の不織布製のフィルターです。
不織布とは文字通り、織らない(不織)布です。織物は経糸緯糸を一定の規則に従って交互に配していますが、不織布はそのルールによらず作られています。不織布は織物でない作り方をしたものなので、不織布を構成する繊維の並び方も、並べられた繊維どうしを動かないように固定する方法も実に様々なものがあります。
様々な不織布が存在しますが、大紀商事の不織布は2種類の長繊維不織布を重ね合わせたものと、長繊維不織布と短繊維不織布を重ね合わせたものとに大きく分けられます。
前者-長繊維不織布を重ね合わせたもの―は主に紅茶、緑茶用のティーバッグに、後者―長繊維不織布・短繊維不織布を重ね合わせたものーはコーヒードリップバッグに使用されています。
コーヒー、茶いずれの用途の不織布にも共通することですが、織物と比較して非常に細い繊維どうしをランダムに組み合わせて固定していることから、繊維どうしの隙間は狭く、不透明度が高くなります。このような特徴を持つことから、不織布フィルターは、元々微細粒子からなるもの、微粉末を多く含むもの、また、壊れて微細化しやすい内容物に適しています。例えば、CTC製法の紅茶、健康茶、針状の緑茶、コーヒー、かつおだしなどが挙げられます。微粉末を外に漏らさず、透明感の高い抽出液を得ることができます。その一方で、不透明性が比較的高いため、内容物を外に見せる用途には不向きです。
バッグの内容物が外に漏れださないような目の細かさという特長を維持しつつ、中身が見えるような透明感を出す、そんな不織布フィルターを目指して大紀商事は日々チャレンジをしています。

大紀商事のフィルターには、なぜ合成繊維を使っているの?

素材の味を引き出す究極のフィルター作りを目指しているからです。

大紀商事は特殊紙の商社として産声を上げました。様々な特殊紙を扱ってきましたが、中でも麦茶用のヒートシール紙は主力商品の一つでした。今でこそ、麦茶はティーバッグで抽出することが主流ですが、私が子供だったころは丸麦をやかんの中に直接入れて煮だしたものです。麦茶を沸かした後、水道水でやかんを冷やしていました。懐かしいですね。

さて、麦茶は比較的スムーズにティーバッグに切り替わりましたし、紅茶については、昔からティーバッグが使われていました。しかし、緑茶については一向にティーバッグになりません。利便性を考えれば、緑茶もスムーズにティーバッグに切り替わってもおかしくないのに、どうしてでしょう。それは、紙製のティーバッグで入れた緑茶は美味しくなかったからです。
おいしくない理由は主に2つあります。1つ目は紙臭、2つ目は、お茶の出(抽出性)が悪い、です。
まず、紙臭について。紙は木材から採取されたパルプから作られます。木材繊維に含まれる水溶性物質が水に溶けだしてしまうことにより、紙臭が発生します。割り箸や木椀のような香りで不快なものではないので、麦茶や紅茶、コーヒーでは問題にされることは少ないです(繊細な感覚の持ち主だと、ペーパーフィルターで淹れたコーヒーだと紙臭が気になる場合もあるようです)。しかし、緑茶では受け入れられにくかったのは、緑茶の香りが繊細であることによるのでしょうか。
続いて抽出性が悪いという点について。先にもお伝えしましたが、紙は木材パルプから作られています。木材パルプは水に浸けると、木材パルプを構成する繊維の中に水が入り込み、繊維が膨れてしまいます。その結果、繊維どうしの隙間が小さくなり、抽出性が悪くなってしまうということに繋がります。
緑茶についても紅茶や麦茶のように、ティーバッグを利用して手軽に美味しく飲んでほしい。2つの問題を解決するために大紀商事が選択した素材が合成繊維なのです。
合成繊維から作られたフィルターを水に入れても、水溶性物質が溶け出すことなく、また、水が入り込んで繊維が膨れてしまうことがありません。こうして、お茶の純粋な味を十分に引き出すことができる、合成繊維製の不織布フィルターは生まれました。

コーヒーフィルター『パチット』の秘密を教えて

『パチット』はコーヒー抽出において最も重要な蒸らしをコントロールしてくれるフィルターです。

コーヒーをハンドドリップする場合、コーヒーに適量(豆全体が軽くしっとりする程度)のお湯を注いだ後、静置して、しっかり蒸らすことが重要です。蒸らすことの効果は、豆に含まれるガス(二酸化炭素)を追い出して、そのガスの力でコーヒーを膨らませることです。コーヒーを膨らませることで、豆と豆の間に隙間ができ、一定時間放置することで、隙間から二酸化炭素を追い出すことができます。お湯を一気に注いでしまうと、豆と豆の隙間が上手くできず、また、抽出液に二酸化炭素が溶け出し、少しすっぱいコーヒーになってしまいます。少量のお湯を注いで、しばらく放置というのが重要ポイントなのです。

では、そのコーヒーの美味しい淹れ方とパチットがどう関係するのでしょうか。
パチットのフィルター部分の素材にはポリプロピレン(PP)の極細繊維が使用されています。PPには撥水性があり、撥水性のある極細繊維でできたフィルターは水を通しません。もしも、パチットが手元にあれば、水を入れてみてください。水は溜まったままになりますよ。お湯は、少し通過するかもしれませんね。温度によって水分子の運動速度が変わるとか、PPが変形するとか……。きちんとした理由は、いずれまた。
一方、コーヒーの抽出液の中には、『両親媒性』の物質が含まれています。両親媒性の物質は水になじむ部分(親水性)と油になじむ部分(親油性または疎水性)の両方がくっついた形になっています。パチットにお湯とコーヒーを入れれば、コーヒーに含まれる両親媒性物質が徐々にお湯に溶け出し、両親媒性物質の親油性部分がPP繊維の表面にくっつき、反対側の親水性部分でPP繊維が覆われます。その結果、PP繊維は親水性となり、コーヒー液が通過できるようになるのです。 さて、実際にパチットでコーヒーを入れてみた場合を考えてみましょう。
パチットをカップにセットして、中にコーヒーを適量(8~12g)入れます。そこにお湯を注ぐと、初めはPP繊維がお湯を弾き、お湯は通過できません。そのままコーヒーがパチットの上端を超えないところまで、お湯を静かに注ぎます。すると、じわじわとコーヒー抽出液がフィルターに染み出してきて、コーヒー液が滴下し始めます。コーヒー液が落ちきる頃に、2回目のお湯を注ぎましょう。
この、1回目のお湯を注いでから、2回目のお湯を注ぐまでが蒸らしタイムになります。
1回目に注ぐことができるお湯の量ですが、コーヒーの量、鮮度にもよるのですが、だいたい20~30cc程度と、蒸らすのに適した量となります。また、1回目のお湯が落ちきるまでの時間もコーヒー豆の粒度、焙煎度合い、種類にもよりますが、2、30秒となり、簡易にコーヒーを淹れても美味しいコーヒーを抽出することができるのです。

短繊維不織布と長繊維不織布って何?

ざっくり言うと、使われている繊維長さが有限なのが短繊維不織布、無限なのが長繊維不織布です。

無限長の繊維と聞くとびっくりしますね。無限というのは、融けた樹脂をノズルから押し出して繊維化し、複数の繊維どうしを固定してシート化する方法で製造された不織布が長繊維不織布であるため、無限長と表現しています。
長繊維不織布は樹脂を高温で溶融して製造するもの、セルロースを溶剤に溶かしたのち再繊維化させて製造するものがあり、更に、高温で溶融するものには、ノズルから押し出した溶融樹脂を冷風、熱風のどちらで引っ張って繊維化するかによっても性質の異なるものになります。
一方、短繊維不織布は、ノズルから押し出された繊維を切断する(合成繊維、再生繊維)、木材や植物を精製する(木材パルプ、麻パルプ、ケナフなど)、繊維の製法に差はあれど、一定長の繊維を用い、複数の繊維どうしを固定してシート化するという製法で作られています。
短繊維不織布は紙と同じ製法で作られる湿式不織布、綿を櫛で梳かして整えるカード不織布などがあります。湿式不織布は水に分散させるため、短繊維不織布の中でも比較的短い5mm程度の繊維が用いられ、カード不織布はくしけずることで整えるため、比較的長い、50mm程度の繊維が使用されます。

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